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ニール・ラッカム『大型商談を成約に導く「SPIN」営業術 』感想

感想

 

様々な営業手法を直接観察し、データに基づいて有効性を検証しつつ書いている本でした。実際の会話がセリフで書かれていることで、場面を想像し、納得しながら読み進めることができた。世の中で良いとされてトレーニングされているものが有効でない事実が浮かび上がってくる点などデータを取って分析する考え方には、学べる点が多々あった。営業についてやったことがなくても会話術として、行かせる部分がある内容だと思いました。

 

メモしておきたい言葉 

 

p26
あとで、自分なりにこの商談を分析してみたところ、彼からコンピュータ・システムを購入するのに私がためらったいちばんの理由は、これを買うと、今後も彼とのつきあいが続くことになるという点だった。
OHPのときはこのセールスマンと二度と会いたくないと思いつつも買った。だが、コンピュータとなると、買ったら最後、何か月もつきあわなくてはならなくなる。それが私をためらわせた。

p30
ある日「大型商談では、自分の交渉相手がほかの人たちに購入を納得させられなければ成約しない」と気付いた彼は、セールススタイルを変えた。意思決定者がひとりでない場合は、一転して、客の理性に訴えかけるようにしたのだ。
~~
「でも感情でしか納得していない客は、ほかの人たちを説得できない。だから、ほかの人とも検討することになりそうだなと思ったら、客観的なビジネス上の利点を挙げるようにしているんだ。おかげで大型商談の業績も前より上がったよ」

p31
?:これまでセールスで一般的に使われてきたテクニック(クロージング・反論応酬話法)

p34
「一時的に業績を上げるだけなら、刺激を与えて、活発に活動させ、同じことを繰り返させればいい。簡単なことです。いわゆるホーソン効果というものです。しかし、この難点は効果がすぐになくなることです。~~」

p47
しかし、見込み客を何年も観察してきた結果、私はポジティブなコメントやお世辞は商談がうまくいった証拠としては認められないと判断するにいたった。
買う気がないからこそ、商談の終わりになにがしかポジティブなものいいをして穏便にセールスマンを追い払おうとするのを私は何度も目にしてきた。
それゆえ、成功の判断基準を言葉ではなくアクションとし、進展を成功、継続を失敗としたのである。

p52
私はさまざまな企業の営業部長から「大型商談で部下の業績を上げるにはどんなトレーニングをすればいいのでしょう」と聞かれる。
この問いに対するもっともシンプルで効果的なアドバイスは、「継続と進展の違いを教えて、商談が継続で終わるような目標は立てさせないことです」だ。

p55
商談の成功例(受注や進展)では失敗例(継続や不成立)よりも質問がずっと多いということだ。この単純だが重要な発見をしたのは私だといいたいところだが、残念ながらすでに二〇〇〇年も前に、ギリシャの歴史家ヘロドトスがこう言っている。「説得力のある人たちの共通点は、質問を数多くすることだ」

p58
質問が重要である理由
理由①質問は買い手をしゃべらせる
理由②質問によって相手の注意を惹きつける
人の言語上の行動は大まかにいって「与える」と「求める」に大別にできる。そして私たちは求める行動の方に、より多くの注意を払う。
理由③質問すると相手は納得するが、説明では納得しない
理由④質問はニーズを明らかにする

p61
オープンな質問とクローズな質問について
クローズな質問とは「はい」か「いいえ」でこたえられる質問。
オープンな質問とは「はい」「いいえ」よりも長い答えが必要となるものだ。
↓実際に検証してみると
先ほどクローズな質問で出した例は、「購入するかどうかを決定するのはあなたですか?」だった。
しかしこのとき見込み客が「私が決定を下すこともありますが、収支に関わってくるようなら購入委員会か調達本部がからんできますね」と答えたら?

オープン・クローズという定義は思ったほどすっきりしないのだ。

p72
おおまかにいって、セールの規模が大きくなると次のようなことがいえる。
●ニーズが育つのに時間がかかる
●複数の意見や考え、影響がニーズに関係してくる。
●ニーズは理性的に判断される。感情的だったり非合理的な理由が根底にあっても、たいていは合理的で正当な理由が必要とされる。
●買った商品がなんらかのニーズをすべて満たしてくれない場合、その決定を下した人物の責任問題になる可能性が高い

p75
ニーズはどのようにして生まれるか
①はじめはちょっとした欠陥でしかない。
②それがはっきりとした問題や不満へと発展する
③ついに欲求や欲望、行動を起こそうという意思に変わる。

p75
潜在ニーズとは、見込み客が口にした問題や不満
顕在ニーズとは、見込み客が口にした欲求や欲望

p76
トップセールスパーソンは、自覚していないことが多いながら、潜在ニーズを顕在ニーズとまったく違うふうに扱う。

p79
かつて小型計算機が商品化され、見本市で製品販売が行われたとき、圧倒的な反響があった。
~~
この製品を目にした瞬間、人々はこれまでの卓上計算機の巨大さと不便さに不満を覚えたからだ。
つまり製品は瞬時に潜在ニーズを生み出した。それだけではない。もうひとつ重要なことは、新しい計算機は価格破壊をもたらしたということだ。
~~
この製品を買いたいと思わせる理由が二重にあったわけだ。

p81
ただしここで忘れてはいけないのは、大型商談の場合、コストは金額だけでははかれないということだ。
前述したように、購入に際して誤った判断を下したことで職を失うことすらある。
それゆえ大型商談では、金額に表せない高いリスクや面倒ごとも、コストとして価値の方程式に加えられることが多い。

 

p82
大型商談でも、潜在ニーズを見つける質問から始めはするが、そこで終わりではない。成功のカギは、潜在ニーズをどう育て、どのような質問の仕方をすることで潜在ニーズを顕在ニーズに変えていけるか、である。

p86
アクションを口にしはじめたとき、それが「バイイング・シグナル」です。
彼女は問題点(潜在ニーズ)はまるで信頼していない。重点を置いているのは「アクション」だ。
彼女が挙げている例は、私たちの用語では顕在ニーズにあたる。

p94
商談の最初に重要な状況質問
「状況質問」の大きな欠点は、買い手にとってつまらない質問が多いということだ。とはいえ、この質問なしにセールスは成立しない。腕利きのセールスパーソンは不必要な「状況質問」はしないということが調査でわかった。彼らは、商談前にきちんとした下調べをし、事前にしっかりと計画を立てるため、買い手を退屈させるような情報収集のための質問をいつまでも続けたりしないのだ。

p99
効果的な質問法
●効果的な商談は普通「状況質問」に始まり、必要な背景的情報を探り出す。とはいえ、買い手を退屈させたりイライラさせてはいけないので、これの多用はいけない。
●ベテランのセールスパーソンは、ほどなく「問題質問」に移り、見込客が抱える問題点や支障、不満については探りだす。
「問題質問」は潜在的ニーズを明らかにし、とくに小型商談では「状況質問」よりも効果的である。

p105
四つのタイプの質問(「状況Situation」「問題Problem」「示唆Implication」「解決Need-payoff」)の頭文字をとるとSPINとなる。

p117
商談の後に意思決定者に話を聞くと、「示唆質問」、つまり問題点が及ぼす影響について質問をしたセールスパーソンを高く評価する人が多かった。「あの人は私と同じ考え方をする」というのだ。「示唆質問」は意思決定者の考え方そのものだ。彼らと同じ見方ができれば、あなたの説得力は、いやに増すのである。

p118
「示唆質問」の弱点
ソクラテスの、プラトンが著した『ソクラテスの弁明』を読めば、史上最大のネゴシエーターがどのように「示唆質問」を使っていたのかが良く分かる。
だが、同時に、ソクラテスは「示唆質問」の弱点も示している。
その性質上、この質問は見込み客を悩ませることになるという点だ。
「示唆質問」を多用すると、見込み客をネガティブな気分にさせたり、落ち込ませたりする危険性が高まる。

p126
小型商談では、セールスの全段階にあなたが関われるが、大型商談では、ユーザーや決定権者に影響力を持つ人が、あなたの出席できない会社内部のミーティングであなたの代わりに売り込んでくれる、ということが何度も繰り返されるのが普通だ。

p127
私が商談成立にこぎつけたのは、私の代わりに売り込むことができるように、商談相手にいろいろ教え込んだからだと思っています。いわば私は舞台監督、仕事をするのはリハーサルの間だけで、開幕してしまえば、ステージに上がることはない。

p131
「解決質問」の利点
●見込み客の関心は、製品の詳細ではなく、解決策にどのような効果があるかということに移っている。見込み客は製品知識に精通するのは無理だが、自分たちの抱えている問題やニーズについては把握しているものだ。
~~
目の前の見込み客が社内同僚や上司に話すときに、もっとも説得力があって、かつもっともあなたのセールスに貢献してくれるのは、製品ではなく、ニーズについて語り合っている時なのだ。

●売り手が利点を説明するのではなく、見込み客地震に利点を説明させる。あなたの提案する解決策(商品)の価値を見込み客に説明させることができれば、同じ説明を社内の人にするときの練習になる。
●見込み客が「自分のアイディアは解決策に貢献している」と思えれば、おのずと情熱と自信が高まる。あなたなしに製品を売り込む際は、この情熱がとても大事になってくる。

p134
示唆質問と解決質問の違いは?
「簡単なことさ、示唆質問はどれも暗くて、解決質問はどれも明るい」

p144
あなたの商品にはないものを求められたとき、「どうしてそれが必要なのですか?」と思わず聞いた経験はないだろうか。
これとは逆に「解決質問」をする最高のタイミングはあなたが応えられるニーズが出てきたときである。
ところが皮肉なことに、そういうときにはなかなか聞かない。

p159
私たちの定義による「利益」は、ニーズの発展と切り離せない。私たちは、よく「『利益』をもっと多用するにはどうすればいいか」と聞かれる。その答えはシンプルだ。「顕在ニーズをしっかり育てれば、『利益』はあとからついてくるようなものです」
見込み客に「これが欲しい」と言わせることができれば、「うちにはそれがあります」といえばいい。

p168
新商品をレクチャーするときは、商品の「特徴」「利点」はやめ、「その商品が解決できる問題」「そうした問題を見つけて、育てるための質問の仕方」に時間をかける。

 

・商談には4段階ある
①予備段階
②調査段階
③解決能力を示す段階
④約束を取り付ける段階

・質問には4種類ある
①状況質問
→商談の際、多用することは控えるべき質問
②問題質問
③示唆質問
→大型商談では、特にこの質問ができるかどうかが重要なスキルとなる
④解決質問
→自分の商品の価値を、相手に言わせることで、有益さを認めさせる質問
示唆質問と併せて使う

・商談は、見込み客に教えることではなく、聞くことである
→自分の商品が心から欲しいと思わせるため

・自分の商品を「特徴」「利点」で考えないようにする
→問題をどう解決できるか、という観点から商品を分析する

 

p204
プライベートの話で興味を引こうとするのをいやがるバイヤーは多い。
~~
見込み客は社内における立場が高ければ高いほど、自分の時間は貴重なものだと思っている
ビジネスに関係のない話を長々としていると彼らをいら立たせてしまう可能性が高くなる
~~
見込み客の多くが、プライベートの話から始める人を信用しないからだ。「この人は下心があって、自分のことを探ろうとしているのではないか」と思わせてしまうのだ。

p230
もしかしたら、クロージングは小型商談では効果的でも、大型商談では通用しないのではないか?
~~
クロージングとは見込み客にプレッシャーをかけることである。l
~~
決めることが小さなことなら、プレッシャーはプラスに働くのだ。だが、決めねばならないことが大きくなればなるほど、プレッシャーをかけると否定的な反応を示すようになる。

p239
「効果のない行動パターンとその原因」
人はときに、自分のしていることは効果的だと信じて、成果の出ない行動をとり続けるものだとロジャーは説明していた。
~~
効果のない行動をとり続ける理由はふたつだけだ、と語った。
ひとつは、正気ではないから。そしてもうひとつは、その効果のない行動をとることで何らかの見返りがあるためだという。
~~
注文によって直接的に報酬が得られ、奨励されるのはクロージングだけだった。だから私も、クロージングを使ったから受注できたと信じ込んでしまったのだ。今ならクライアントのニーズを発展させたことが商談成立につながったのだとわかる。勝因はクロージングではなく、クロージングをなど使わなくてもうまくいったのだ、と。
~~
心理学における強化の理論をご存じなら、ときには得られる奨励の方が、いつも得られる奨励よりも、行動を続けさせる効果が強いことも、おわかりだろう。

p243
ハイウェスト社では、アメリカン航空のボブ・ボイルズと共同で、クロージングを全く使わないのと、クロージングを使いすぎるのとでは、どちらがより悪影響を及ぼすかを調査したことがある。
その結果、クロージングを全く使わない商談の成功率は23%、1回だけ使ったときの成功率は61%だった。成功率が最も低かったのは、2回以上クロージングを使ったもので、20%を下回ったが、クロージングを全く使わない商談も効果的とは言えないことが分かった」。

p251
③約束を取り付けるときには、次の3段階を踏むこと
●主な懸念事項をとりあげたかどうかチェックする
●利益をまとめる
●現実的な約束を提案する

 

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